母デイサービスなんか行きたくない・・
デイサービスに行ってみない?と聞くと、母は頑として首を縦に振りませんでした。
50代後半まで介護福祉士として働いてきた母にとって、デイサービスに通うことは、自分が老いたことを認めることと同じだったのかもしれません。
自宅で暮らす高齢者が、日帰りで施設に通い、食事・入浴・レクリエーションなどのサービスを受ける
認知症の診断が下りても、介護サービスを受けることへの拒否は続いていて・・
見学に行けば渋々ついてくる、でも帰宅すれば悪態をつく。その繰り返しでした。
この記事では、デイサービスを断固拒否していた母が通えるようになるまでの経緯を、できるだけ正直に書きました。
「うちの親も絶対行かないと言っている」と悩んでいる方に、ぜひ読んでもらいたいです。
- 認知症の親がデイサービスを拒否する理由と心理
- 「口実作戦」をはじめとした、拒否を乗り越える具体的な方法
- 認知症専門のデイサービスを選ぶことの意味と効果
- 外への連れ出し方、施設見学のうまい誘い方
- 初日の送迎スタッフによる「神対応」の実例
- 認知症のプライドを「敵」ではなく「味方」にする声かけパターン4選
- 「本人の世界に合わせる」という介護の選択
- 介護する側が限界になる前に知っておくべきこと
なぜ認知症の親はデイサービスを拒否するのか


まず「なぜ拒否するのか?」を理解することが、突破口を見つける第一歩になります。
認知症の方がデイサービスを拒否する理由
| 拒否の理由 | 背景にある心理 |
|---|---|
| 「そんなところに行く必要はない」 | 自分が介護を必要とする状態だと認めたくない |
| 「知らない人の中に行きたくない」 | 環境の変化への不安・恐怖 |
| 「恥ずかしい」 | プライドや世間体を気にしている |
| 「行っても何もおもしろくない」 | 過去に行ったときの悪いイメージが残っている |
| 理由を言葉にできない | 認知症による混乱や不安が言語化できない |
うちの母の場合は、介護福祉士として働いていたことが大きかったのか、かつて自分が「介護する側」として立っていた場所に、「介護される側」として行くことへの強烈な抵抗感があったのかもしれない。
プライドといえばプライドですが、それは長年の仕事への誇りでもあって・・
「口実作戦」正面突破を諦めた日


「デイサービスに行こう!」と誘って説得しようとすればするほど、頑固になっていく母・・
そこで考えたのが「口実作戦」!
- 「ちょっとドライブしよ!」
- 「近くまで行くついでに、ちょっと寄ってみない?」
- 「見学だけだから、気に入らなければ帰ればいいよ」
こう言って、一緒に出かければと母は付いてきて、行った先がデイサービスの施設でも、なんだかんだ楽しんでいる様子でした。



あんなところ、もう行かない!



なんで連れて行ったんだ!!
でも次に誘えばまた悪態ついたことも忘れ、その都度なんだか楽しげなのにまた愚痴だらけ。
その繰り返しでした。
「それって騙してるんじゃないか?」と思う方もいるかもしれないし、私もそう感じたこともあります。
- 行った先では楽しんでいる
- 帰宅後に悪態をついても、翌日には忘れている
そうなってくると「騙している」というより、「こんくらべ」って感じでした。
外への連れ出し方——施設見学のうまい誘い方


施設見学に連れて行くとき、「デイサービスの見学に行こう」とは言いませんでした。
代わりに使っていたのがこんな言葉です。
ドライブがてら、ちょっとお茶しに行こう
- 目的地を施設にしながら、「お出かけ」として誘う
- 外出が好きな方や、気分転換が効く方に使いやすい
「○○さんに会いに行こう」
- ケアマネさんや施設スタッフを「知り合い」として紹介しておき、「会いに行く」という形で連れて行く
「ちょっと見るだけ、気に入らなければ帰ろう」
- 「決定ではない」という安心感を与える
- 選択権を本人に委ねることで、抵抗を和らげる効果がある
「私も一緒に行くから」
- 一人で知らない場所に行かされる不安を取り除く
- 特に不安が強い方に効果的
どの言葉が合うかは、その人の性格や状態によります。
「正直に言わないのはどうか」と迷う気持ちもわかりますが、目的は「穏やかに過ごせる環境を整えること」です。
手段は状況に合わせていい、と私は割り切りました。
認知症専門のデイサービスへの切り替え


一般的なデイサービスへの見学を繰り返しても、結果は見事に同じで「行きたくない」でした。



でも絶対、デイサービスに行ってくれないと、こっちの身が持たない
そこでケアマネさんに相談して、認知症の方に特化したデイサービスを紹介してもらい、契約しました。
母の意思なんて、正直もう聞いていられません。
冷たい判断だったかもしれないけれど、私自身がつぶれそうで、母から離れる時間がどうしても必要でした。
一般デイサービスと認知症専門デイサービスの違い
| 一般デイサービス | 認知症専門デイサービス | |
|---|---|---|
| 対象 | 要介護者全般 | 認知症の方を中心 |
| スタッフの専門性 | 介護全般 | 認知症ケアに特化 |
| プログラム | レクリエーション・入浴・食事など | 認知症の症状に合わせた活動 |
| 人数規模 | 比較的大人数 | 少人数が多い |
| 環境 | 賑やかなことも多い | 落ち着いた雰囲気が多い |
認知症の方は、大人数・賑やか・慣れない環境に不安を感じやすいですが、専門施設は、そういった点に配慮した設計になっていることが多いのです。
悩んでいるかたは、ぜひケアマネさんに「認知症専門のデイサービスを探してほしい」と伝えてみてください。
あとはデイサービス先で必要な「歯磨きセット」と「上履き」を、あなたが準備するだけです。
デイサービス初日——スタッフさんの「神対応」


そしていよいよ認知症専門デイサービスの初日、送迎の車が家の前に到着。
またひと悶着あるだろうと覚悟してました。
ところが、迎えに来てくれたスタッフさんの対応は、さすがとしか言いようがなかったです。
初対面のスタッフさんに、不審そうな顔をした母でしたが・・



○○さん、お待ちしていました。実は今日、ベテランの方にぜひ来ていただきたくて。利用者さんの中に、なかなか心を開いてくれない方がいて……○○さんのような経験のある方に、そばにいていただけると助かるんです
母の表情が、少しずつ変わっていく・・



そうなの。それは大変ね



本当に助かります。一緒に来ていただけますか?



しょうがないわね・・
母は少し背筋を伸ばし、スタッフさんに笑顔を向けて、あれほど手こずっていたのがウソのように、母はすんなり送迎車に乗っていきました。
「介護のプロとして必要とされている」という感覚が、母の背中を押したのだと思います。
これが、認知症ケアの専門スタッフの力だと実感した瞬間でした。
「私、ここで働いてるの」——本人の世界に合わせる選択


定期的に通うようになっても、「デイサービスという場所」の認識は無く、自分がお世話になっているという認識もなく、自分がそこで働いているつもりでした。
介護福祉士として長年働いてきた記憶が、そういう形で出てきたのだと思います。
私と夫は相談して、それに合わせることにしました。



今日もお仕事お疲れ様、どうだった?



いろいろ大変だったのよ
本当のことを言って混乱させたりしたら、まためんどくさいので・・
母がそこで穏やかに過ごせているなら、それで良し!と思うことにしました。
認知症の介護をしていると、「本当のことを言うべきか」という場面が何度も出て来るのですが・・
だって、言っても分かってくれないし、そんな努力も虚しくなるだけですから・・
少なくとも、母はデイサービスに通うようになってから、少し表情が柔らかくなったのは事実です。
認知症のプライドは、敵じゃなかった


振り返ってみると、母がデイサービスを拒否していた理由も、初日にすんなり行けた理由も、根っこは同じだったと思います。
それは、プライド
- 「介護される側になりたくない」というプライドが拒否を生み
- 「必要とされるベテラン」というプライドが背中を押す
プライドを「厄介なもの」として抑えようとしていた間は、ずっと壁にぶつかっていましたが、でもスタッフさんはそのプライドに乗り、否定せず、潰さず、むしろ活かしてくれました。
認知症になっても、プライドや感情はしっかり残っているのですね。
それを邪魔者扱いするのではなく、その人らしさとして尊重する——そこに突破口がありました。
声かけパターン4選——その人に合った誘い方を見つける


どんな声かけが効くかは、その人の性格や背景によって違いますが、参考として、効果的とされるパターンをまとめました。
役割を与える(プライドが高い方・仕事への誇りが強い方に)
- 「あなたに来てほしい」「頼りにしています」と、必要とされている感覚を引き出す
- うちの母にはこのパターンがぴったり
好奇心をくすぐる(外出好き・新しいもの好きな方に)
- 「今日は特別なことがあるんだよ」と、楽しそうな雰囲気で誘う
- 施設に行くことを意識させないまま外に連れ出せる。
寄り添いながら誘う(不安が強い方・孤独感がある方に)
- 「一緒に行きましょ」とスタッフや家族が寄り添う形で誘導する
- 「ひとりじゃない」という安心感が大切
小さな選択肢を与える(自分で決めたい気持ちが強い方に)
- 「行く?行かない?」ではなく「今日はAとBどっちにする?」と、行くことを前提に小さな選択をさせる
まとめ|諦めずに、でも正面からだけでなく


あれほど「行かない」と言い張っていた母が、いつの間にかデイサービスに通うことが日常になりました。
介護は、正面からぶつかるだけじゃない。
口実を作って連れて行くことも、本人の思い込みに合わせることも、ときには必要な選択。
それが正解かどうかは、今でもわからない。
でも母が穏やかに過ごせているなら、それでよかったと思っている・・
プロの力を借りることを、遠慮しなくていいのです。
そして、どうしても動かないときは作戦を色々変えていくしかない。
罵詈雑言浴びせちゃっても良いじゃない?
向こうが叩いてきたら、こっちも叩いちゃうのは自然なことだし・・
大切なのは、親が穏やかに過ごせること。
そして介護している自分が壊れないこと。
その両方のバランスを取るためなら、手段は問わないと私は思っています。
- 認知症の親がデイサービスを拒否するのは、プライドや不安など理由がある
- 正面突破より「口実作戦」が効果的な場合が多い
- 施設見学の誘い方ひとつで、反応が大きく変わる
- 認知症専門のデイサービスは、一般のデイサービスとは対応力が違う
- 初日の送迎スタッフの声かけがカギになることがある
- 認知症のプライドは敵ではなく、うまく活かすことができる
- 「本人の世界に合わせる」ことが、穏やかな介護につながる
- 介護する側が限界になる前に、専門家に頼ることが大切
- 親の意思より、介護者自身の限界を優先していい場面もある

